過去の感情を癒し自分を生きる香り

アタシ、安らかに死ねるような香りが欲しいんです/脳内フレグランス

    
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アタシ、安らかに死ねるような香りが欲しいんです/脳内フレグランス

 

突然だけど、アタシは、まるで生から死へとシフトする、あの眠りの瞬間が好き。
…というより、その時間しか楽しみがない。

仕事は嫌いではないけれど、あんまり意味のある時間とは思えない。とにかく我慢している感じ。

最近は、職場の先輩ともうまくいっていない。言い合いになることもしばしば。あんなに一生懸命に言っているのに、全然わかってくれない。そんな自分の時間じゃない時間を過ごしながら、お客さんの前では笑顔でいなくちゃならない。笑顔も仕事なのだ。

 

そんなある日、町のはずれに、不思議な香りを売っているという「空想調香店」に行ってみた。

 

空想調香店へ初めて行ってみる

 

空想調香店は、普通の住宅かと思うような店構えなので、ちょっとこれがお店なのかと思ってしまう。

でも、思い切ってドアを開けてみた。

 

 

 

アタシ:
「すいません…すいませーんっ!」

 

店主:
「はい、何でしょう?」

 

 

アタシ:
「あの、安らかに死ねるような香りって、ありませんかね?」

 

店主:
「安らかに死ねるような香りって・・・毒ガスの匂いですか!?」

 

 

アタシ:
「いいえ、毒ガスの香りじゃなくて」

 

店主:
「はぁ…」

 

 

アタシ:
自然死するときのように、安らかな気持ちになる香りなんてあるかしら?」

 

店主:
「あ。ありますよ」

 

 

アタシ:
「えっ、あるんですか!じゃ、それ一つください」

 

店主:
「でも、その香りを嗅いでも死なないですよ」

 

 

アタシ:
「別に死にたいんじゃないんです! 死んじゃう香りなら、いりません!」

 

店主:
「でも、どうして、安らかに死ねるような香り、なんて欲しいんでしょう?」

 

 

アタシ:
「余裕なんいんです。仕事、大変なんですよ」

 

店主:
「タイヘンなんですね。でも、今日は平日ですけれど、お休みなんですか?」

 

 

アタシ:
「アタシ、販売関係の仕事していて土日は必ず出勤で、平日が休みなんです」

 

店主:
「あ、そうなんですね」

 

アタシ:
「はい。一日中、立ちっぱなしで体力的にもきついし、
ずっとお客さん相手なんで、すごく気を使うんです」

 

店主:
「あー、それは、たいへんですね…」

 

 

アタシ:
「それで、夜眠りにつくときだけが、至福のときなんです」

 

店主:
「・・・。」

 

 

アタシ:
「ほら、眠りにつく時って、死ぬ時と似てませんか?」

 

店主:
「えっ、死んだことがないからわかりませんが・・・」

 

 

アタシ:
「ぐっすり寝ている時って、死んでるのと同じじゃないですか。無、みたいな」

 

店主:
「まぁ、そうかもしれませんが」

 

 

アタシ:
「そうですよ。それで、そのときの至福になるような香りが欲しいんです」

 

店主:
「んんーーと、じゃぁ、これなんかはどうですかね? 安眠作用全部入りの香り

 

 

 

アタシ:
「安眠全部入り!?」

 

店主:
「そう。リラックス効果のあるラベンダーをはじめ、オレンジ、プチグレン、マンダリン、イランイラン、カモミール、パルマローザと、安眠に効くアロマの香りがみんな入っています」

 

 

アタシ:
「まぁ、、、香りは悪くないけれど、フツウな感じ」

 

店主:
「普通…ですか」

 

 

アタシ:
「もっと、なんかこう、疲れて帰ってきて、すぐお風呂に入って、
あとは寝るだけぇ〜〜って感じで、
お布団に入るときの“ふうぅ〜”って感じの、至福な香り」

 

店主:
「ずいぶん、個人的で難しいオーダーですね…。
こっちの小さい瓶に入ったのはいかがですか?」

 

 

アタシ:
「…これ、蓋が開かないんですけれど・・・」

 

店主:
「封印しているので。いま、香りの熟成中なんです。どんな香りか、想像してみてください」

 

 

アタシ:
「えっ、わかんないです!知らない香りだから買いに来たんですけどっ」

 

店主:
「あなたが、お布団に入る時の “ふうぅ〜” としたときの様子を
イメージするんです。どんな気分か、どんな香りか」

 

 

アタシ:
「ん〜、なんかこう、イメージできるようなできないような・・・。
なんとなくわかりますけれど、言葉にできないです」

 

店主:
「何となく生まれてきた香り。
それは、あなたの頭の中でイメージしたもので、あなただけの“脳内フレグランス”です」

 

 

アタシ:
「脳内フレグランス!?」

 

店主:
「そうです。わざわざ高いお金を払って香りを買わなくても、いつでもあなたの中で香りますよ」

 

 

アタシ:
「えーー、なんかぜんぜん納得していないけれど、ちょっと納得しちゃったヘンな感じがする」

 

店主:
「あの封印した瓶の香りが欲しければ、10日後に、また来てください。
そこにある棚に値札をつけておいておきます」

 

 

アタシ:
「また来るの、めんどうだな〜」

 

店主:
「脳内フレグランスがあれば、わざわざ来なくてもいいんじゃないですか」

 

 

アタシ:
「ちょっと、検討します」

 

・・・アタシは、お店を後にしたけれど、あの小瓶が気になる。

でも、いつでも自分で脳内フレグランスを発生させれば、大丈夫かな〜。

大丈夫だったら、面倒だから行かないけど、ダメだったら、もう一度行ってみようかな。。。

 

とにかく、アタシには、至福の時間が必要。もっと、そうした時間を増やさないと。

 

本当は、安らかに死ねるような香りじゃないのを欲しがりたいのだけれど。

 

ということで、安らかに死ねるような香りを創りました

 

注: 眠たくなることはあっても、死ぬことはありません。

 

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