春の季節に楽しみたいミモザの香りは暖かな陽だまりのような雰囲気
春先に空を彩るミモザの花。
本来ミモザは「オジギソウ」のことでした。オジギソウって、指で葉っぱを触ると、お辞儀するように葉を閉じながら動きます。その様子から古代ギリシャ語のmimosをあてたと言われています。オジギソウの学名もMimosa pudicaとなっています。
でも、フサアカシアやギンヨウアカシアの栽培がヨーロッパで盛んになり、葉っぱがオジギソウに似ていることから、ミモザと呼ばれて今日に至っています。本家のオジギソウはどう思っているのでしょうね。
今回は、そんなミモザ(フサアカシア)の香りについて書いてみました。
ミモザ
オーストラリア原産のマメ科の常緑高木。
一般的に香料を採取するミモザとは、フサアカシア(学名:Acacia dealbata)のことを指します。
花は黄色いボンボンのような可愛らしい花で、3月から4月にかけて咲くために春の代表的な花とされています。
ミモザがヨーロッパに広まったわけ
今でこそ、メジャーな花ですが、昔はオーストラリアなど南半球に自生していた花で、ヨーロッパの人々は、その花のことを知りませんでした。
しかし、大航海時代以降の18世紀に、イギリスの探検家ジェームス・クックにより、ヨーロッパに持ち込まれます。
ミモザの花の美しさに心を奪われたのは、当時の貴族たちでした。大金をはたいてミモザを欧州で栽培を始めます。そのうち、イタリアの貧しい村であるセボルガ村で栽培が盛んになり、ヨーロッパ中にミモザが流通することになります。
明るくはっきりとした黄色いカラーや、ボンボンのような可愛らしい風貌は、ヨーロッパの人たちに好まれる色合いだったと言います。
女性の日にミモザを贈る
毎年3月8日は女性の日とされます。「ミモザの日」とも呼ばれています。
この日、イタリアでは、女性は一切の家事や労働から解放され、心ゆくまで自分の時間を楽しみます。
そして、男性が女性に愛や感謝を伝える日とされているのです。
日本でいう、ホワイトデーのようなものでしょうか。
もともと、女性の日は、国連が定めた国際女性デーにちなんでいて、女性の政治的自由と平等のための記念日とされています。
その記念日に、何かシンボルのような花が欲しいということで、女性運動家の人々が検討しました。その結果、春に咲く花で幸せをもたらすという黄色い花をつけるミモザは、比較的安価ということもあり、女性の日のシンボルフラワーとして採用されたのです。
こうして、政治運動から始まった女性の日ですが、いつの間にか、そうした政治色は薄れていき、やがて「愛や感謝を伝える日」となっていったのです。
女性の日である3月8日は、イタリアのローマでは街中が、黄色いミモザの花々で彩られるそうです。ミモザを栽培している農家も、女性の日をターゲットにして、大量のミモザをローマなどの都市に出荷します。
ミモザの香り
ミモザの天然香料は、石油エーテルなどの揮発性の高い溶剤を使って精油成分を溶剤に移行させる溶剤抽出法で作ります。
ジャスミンほどではないですが、採取できる量が少ないので高価な香料です。
香りはパウダリーで、嗅覚への刺激が柔らかく、暖かな印象です。
石鹸のような香りと表現する人もいますが、もっと角が取れた優しく穏やかな香りです。
アロマテラピーなどで使うことは少ないので、もっぱら、高級香水や化粧品の香料として使われています。
ミモザの香りをこんなふうに使っています
明るい黄色で、ふさふさとした花の印象も影響しているかもしれませんが、どちらかというと、前向きな印象を作りたい時に使うことが多いです。
前向きな印象を作りたいとき
ミモザの花自体が、幸せや元気を表すカラーである黄色であることからも、前向きな印象を作りたいときに使うことが多いです。
香り自体はとてもほのかで儚い感じですが、鼻あたりがよく、ふんわりと立ち昇るような香りなので、明るい雰囲気を感じる人が多いと思います。キラキラした感じではありませんが、ほのかな明るさが欲しい時に重宝します。
暖かな雰囲気を醸し出したいとき
ミモザの香りは、あまり主張性のあるものでありませんが、そのパウダリーな印象からも、陽だまりのような温もりを感じる香りです。お花もボンボンのようにふさふさして暖かそうなので、香りもその雰囲気を写し取っているようです。
ミモザの花は、春先に一斉に咲くので、小春日和が似合う香りであり、曇りや雨ではなく晴れの日がふさわしい香りでもあります。
パステルで描いた女の子っぽい感じを出したいとき
香水や化粧品によく使われることから、一見、大人の香りかな、と思う時もあります。でも、ほのかで優しい香りは、ちょっぴりファンシーでほんわかした輪郭の女の子のほうが似合う香りではないかと感じています。
人物の香りを作る時には「ほんわかした雰囲気」を持つ女性に対しては、よく調合する香りでもあります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
ミモザは特にローマでは、女性の日に贈る花として人気です。街中がミモザに彩られるなんて素敵ですね。
香りは、パウダリーでライトで暖かく石鹸みたいな印象。香水や化粧品にも多く使われています。
ミモザの天然香料は、溶剤抽出法で採取し、花に対して採れる精油は微量です。でも、樹木にたくさんの花を咲かせるので、ジャスミンやローズに比べれば安く手に入るものでもあります。
溶剤抽出した香料は、コンクと呼ばれる固形や粘液性の高いどろっとしたものです。100%精油というわけではないので、難しいのでアロマテラピーには向かないと言われています。
でも、お花の香り自体はとても優しい香りなので、多くの人にとって気に入ってもらえる香りだと思います。
春になったらぜひ触れてみたい香りのひとつです。