過去の感情を癒し自分を生きる香り

見た目どおりに香りをつくっていけないと学んだ日/女心の複雑さ

    
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見た目どおりに香りをつくっていけないと学んだ日/女心の複雑さ

私は人物の印象を香りにするのは得意なのですが、いつもうまくいくとは限りません。時には、「しまった・・・」と失敗してしまうときもあります。

今回はその時にやってしまった失敗談です。

 

即興での香りデザインは好評だったけれど

 

かなり以前に開催したあるイベントでのお話です。

 

会場に訪れた方の印象を即興でデザインして、その場で香料を調合するという、かなり無茶な企画をやったことがあります。

通常はデザインだけでも1日中ウンウン唸っているものなのです。

しかし、このイベントの時は、絵でいえば、ちょっと鉛筆で下書きする程度の荒削りなデザインで、香りの方向性だけを体験してもらうという気軽なものでした。

 

テーブルに座ったお客さんのパッと見た目の印象を1分くらいで把握して、もっとも特徴的な印象を香りにしていく、という感じでした。

使う香料も、お一人につき3つ程度を調合して仕上げるというとても簡易なものでした。

 

それでも、グリーン感を出した香りを手渡したら、偶然にも「緑」という文字が入っていたお名前の方だったり、シトラスをふんだんに使った香りでは「実はレモンの香りがすっごく好きなんですよ!」という方がいたりして、シンクロニシティが続いていました。

 

対照的な印象の二人の女性

 

その日の分のデザインは完売したほどの盛況ぶりだったのですが、その中に外資系の化粧品会社に勤めているOLさんがいました。お友達と二人で来場していて、一緒に香りのデザインを体験してくれました。

 

可愛らしいOLさんの香り

 

はじめにつくったのは、小柄で少し童顔の可愛らしい女性の香りでした。お話によると年齢は30才前半のようでしたが、瞳がクリクリと大きく栗色のショートボブの方でした。

パッと見た感じで作っていくので、明るくて可愛らしいちょっぴり大人な女性というイメージでつくりました。フローラルブーケタイプの香りで、いろいろな種類のお花がたくさん寄り集まったような香りです。お花もコロコロと転がるような甘い感じの香調を前面に出して可愛らしい女性のイメージを演出していきました。

 

その香りが出来上がると、早速、彼女は香りをムエット(試香紙)につけてチェックしていました。

「あ、いい香り!」と満足したようです。

 

職場の同僚とふたりで参加していたので、隣に座っているお友達にもムエットを渡してあげて「どうぉ?」と聞いているようでした。

「あー、本当に○○ちゃんっぽい!甘い香りだね〜」と感心した様子です。

 

そんなことがあって、次にそのお友達の方のデザインに取り掛かりました。

 

30代前半のかっこいいタイプの大人な香り

 

もうひとかたも、30歳代前半という感じの方でしたが、背が高くてロングヘアの快活な女性でした。ただ、可愛らしいというよりも、「かっこいい」という感じのややボーイッシュな方でした。サングラスを頭の上にかけて赤いスポーツカーにでも乗っていそうな感じの女性です。

 

そんな印象をパッと掴んだので、「快活でかっこよくて元気」みたいなイメージで香りづくりを始めました。横にいるお友達とは、かなり印象が違う感じです。

 

出来上がった香りは、フローラルタイプの香りではあるのですが、フゼアの要素(植物のシダをイメージしたような香り)を取り入れて、緑と茶色を混ぜたような、でも、ウエットな爽やかさが残るような香りに仕上げました。甘さ控えめでビターテイストな香りです。

それをムエットにつけて、かっこいい彼女に渡したのですが、少し驚いたような顔で言いました。

 

 

「これ、メンズの香りじゃぁ〜〜〜ん!」

 

彼女たちは化粧品会社に勤めているので、香りには日常的に接しているようで、どんな種類の香りなのかすぐに分かったようです。

 

デザインの中心に据えたフゼア調の香りは、男性の整髪料などに使われているような感じのものであるのは確かです。

 

「えーー、○○ちゃんは、あんなに可愛らしい香りなのに、私はメンズなのぉ!?」と浮かない様子。

 

即興の香りデザインということで、私も見た目のかっこいい部分にフォーカスして香りを構成していったため、かなりメンズ寄りの香りになってしまったようです。

確かに香りの印象としては彼女の特徴を捉えてはいると思うのですが、かっこいい彼女としては、もっと「女性」の部分を見て欲しかったようです。

 

女性は率直な印象よりも見て欲しいところがある

 

私としては、正直に感じたとおりにデザインしたのですが、「正直だからと良い」というわけでもなさそうです。

 

おそらく彼女自身も自分のことを「可愛らしい姿」とは思ってはいないでしょう。かっこいいという印象は、他の人からも言われたことがあるかもしれません。

 

しかし、自分というシルエットの中で、「どこに焦点を当てているのか」ということは気になるようです。確かに、例のかっこいい女性も細やかに観察すると、もっと艶やかな部分が見つかったかもしれません。

 

でも、私は見たままの印象をそのまま香りに変換してしまったのです。やはり、女性は女性らしいところに配慮して欲しいものなのだと、改めて痛感させられた出来事でした。

 

 

最近も、スポーツをしている快活な50代の女性の香りをつくったのですが、正直にボーイッシュなイメージを反映させたものの、垣間見える女性らしさにも配慮して、その要素をデザインに取り込みました。

すると、彼女に渡したフレグランスレポートのなかで一番反応したのは、その女性らしい要素を取り入れたという箇所でした。そして、彼女がシュッと一拭きした香りに、とても満足している様子でした。

 

女心はなかなか難しいものだと感じた次第です。

オトコなんて、すごく単純なのに、やはり女性は複雑です..。

 

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