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日本人がゆずを好きになるのは香りの神の領域に秘密があった

    
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日本人がゆずを好きになるのは香りの神の領域に秘密があった

「ゆず」というと思い浮かべるのは冬至の日に入る柚子湯だと思います。
お風呂に柚子を浮かべて入浴すると無病息災とされていますし、強い香りを放つので、邪気を祓うとも言われています。

実際に柚子湯に入ってみると、香気成分を含んだ湯気が立ち上り、ほんのり爽やかで、どことなく懐かしさを感じるような香りを楽しむことができます。

もちろん、ゆずは柚子湯だけに使われているわけではなく、和食の香り付けや、ゆずジャム、柚子胡椒などの食材としての利用も多いです。
おしんこやお吸い物にゆずの刻みが乗っていると、なんとも言えない「和」を感じるものです。

そんなわけで日本は世界一のゆず消費国ですが、どうして、日本人はゆずの香りに惹かれてしまうのでしょうか。

それは、やはり、あの独特の香りにあると思うのです。

ゆずの香りは、爽やかでありながら、ほんのりとした苦味を感じつつも、まろやかな温かみを感じるシトラス系の香りです。

ゆずの香りの秘密

それでは、この香りにどんな秘密があるのか、ゆずの香りの妖精に聞いてみましょう。

ゆずの香りは、日本人に馴染みが深いけれど、どうしてこんなに受け入れられているの?

やはり、ゆず独特の、爽やかさと懐かしさを両立させたような柑橘系の香りに秘密があると思います。

爽やかさは、他の柑橘系の香りにも多くみられるリモネンという香気成分によるところが大きいと思います。

懐かしさ、についてはどうでしょう。
これは、風物詩として冬至に柚子湯に入ったり、和食に柚子の香りが添えられていて、定期的にゆずの香りに濃厚に触れる機会がある、ということだと思います。

幼少期のころから、ある行事ごとに特定の香りに触れることで、「あの時の香りだ」と記憶がフラッシュバックします。

それに、ゆずの香りは柑橘系という多くの人に好まれる香りでありながら、他の柑橘類とは一線を画するような、いわゆる「柚子らしさ」をまとっています。

その柚子らしさは、温かみですが、これはミカンのような温かみとも異なる香りです。

ゆずの香りを特徴付ける芳香成分の発見

ゆずの香りが独特なのはなぜだろう?

ゆずに限らず、自然界にある花や果実から出る香りには、数百種類の香気成分で構成されています。この組み合わせによって、無限のパターンが生み出されているわけです。

ただ、ゆずの香りには、2009年あたりに、柚子を特徴づける香気成分が見つかっています。
それが「ユズノン」です。

ユズノンというのは、また可愛らしい名前だけど、どんな物質なの?

化学式では、
(6Z,8E)-undeca-6,8,10-trien-3-one
と表現されますが、詳しいことはわかりません。

数百種類もの香気成分がわかっていながら、まだまだ発見されていない成分も多いと聞きます。
天然香料は採取はできるものの、未解明な成分もまだまだあるということです。

香りの成分を分析するガスクロマトグラフィーという機械があるのですが、どんどん高性能になってきて、いろいろな天然香料の香り成分が解明されてきているようです。

でも、柚子でもバラでも、天然香料の中に含まれている成分がすべて明らかになっているわけではありません。
100%は解明されておらず、残りの0.01%とか0.001%は何が入っているかがわからない天然香料がほとんどです。

調香師の世界では、そのわからない部分については「神の領域」と呼んでいます。

天然香料はいわば、神様の香りのデザインなのです。
調香師は、自然界で神様がデザインしているような香りの調合を真似しているとも言えます。

つまり、神様の真似事をして、いかに人間が神様に近づけるか、ということに挑んでいるのでしょう。

そうしたなか、柚子の香りでは「ユズノン」という香気成分が発見されました。

これがゆずの香りを形作る一つの成分だというのです。

しかも、その成分の含有量は0.001%にも満たない極微量だと言います。
でも、そんな微量な成分がゆずの香りを形作っているのです。

神様の調香が少しだけ解明された、ということですね。

解明できていない領域があるということは危険な成分もあるってこと?

どんな成分が入っているかはわからないから神の領域なのですが、「わからない」ということは、危険な成分もあるかしれない、ということですね。

私自身も自分の香りのことが全てわかっているわけではありません。あなたたち人間も、自分のことを全てわかっていたりしないでしょう。
健康診断に行ってから初めて尿酸値が高い、とか、脂肪過多だ、ということがわかったりしますね。自分の性格や心のうちも、自分がどんな内面を持っているかを全部正確に説明することは難しいと思います。

そうしたことが香りにも言えるわけです。

いくら人間界の科学が発展したからといって、自然界の全部の全部が解明されているわけではありません。

でも、仮に危険な成分が入っていたとしても、解明できていない領域というのは、とても少ない割合です。

なので、もし毒性がある成分があったとしても、極微量で人体には影響を及ぼさないレベルなのかもしれません。

精油でよく知られている光毒性のある成分としてベルガモットなどの柑橘系の精油に含まれるフロクマリン類があります。
でも、これは成分として解明されていて、フロクマリンを含む精油を皮膚につけて紫外線に当たると炎症を起こす危険性があり、こうしたものは注意しなければなりません。

天然の香りには神の領域が存在する

それにしても精油などの天然香料には神の領域があるなんて知らなかった…

ゆずを特徴づける香りが発見されたことで、より「柚子らしい」香りを人工的に作ることが容易になったとも言えます。
まあ、実際にユズノンを人工的に作るのは難しいので、今まで解明されている香りの成分を組み合わせて柚子らしい香りを作るという工程はしばらく続くでしょう。

柚子に限らず、天然の香りには、奥深さがあるというのは、この神の領域のせいなのです。

柚子でもローズでも中心となる香り成分を組み合わせれば、それっぽい香りになります。
でも、さらに微量な成分でも重層的に組み合わせていくと深みが出てきて、本物の香りに限りなく近くなります。

しかしながら、天然の香りには、さらに「神の領域」があることによって、その香りの深みが圧倒的になるのです。

あの超微量なユズノンがゆずの香りを形作っているように、神の領域が人間には到達し得ない深遠な香りが生成されているのです。

ゆずの香りが日本人を惹きつけてやまないということには、その神の領域も関わっているの?

そうかもしれません。
ゆずは、柚子湯や和食の香り付けとしても使われる、日本人に心地の良い香りです。先ほど言ったように、古来からの週刊によって、懐かしさや親しみやすさを継承してきたとも言えます。

でも、なぜそうした風習があるのか。ただ単にゆずの香りが強くて、なんとなくいい香りだから、というだけでは説明がつかないこともあります。

それは、まだ解明されていない「神の領域」の中に、日本人の波動に共鳴するような成分、または成分の組み合わせであるデザインが秘められていると思います。

日本人に共鳴したからこそ、ゆずの香りが、こんなにも懐かしさを感じさせながら「和」を司っているのだと思っています。

「ゆずの香り」のまとめ

柚子の香りは、爽やかでありながら、温かみのある穏やかな印象で、日本人に愛されている香りでもあります。
最近は、それを特徴づけるユズノンという香気成分が発見されました。

ゆずの実は早ければ8月の終わりから採取することができます。
でも、冬にとれるゆずは、外の寒さとも相まって、その温かみのある香りが、なんとも気持ちをほっとしてくれるようです。

冬至の柚子湯や和食の香り付けにもよく使われるのは、ゆずの香りが日本人の感性に共鳴している部分があるからだと思います。
きっとそれは、最新の科学でも解明されていない、ほんのわずかの割合に存在する「神の領域」。

私たちに心地よいゆずの香りをこれからも楽しみたいものです。

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