第一印象は初対面のたった2秒間だけ体験できる一期一会の貴重な機会
私は人物の第一印象で香りをつくる機会が多いのですが、いろいろな方々と接してみて気がついたことがあります。
それは、第一印象には、すごい情報が含まれているということです。第一印象を発している本人は、何をしているわけではないのに、勝手に外部に放出されてしまう第一印象。
いったい、それはどういうことなのでしょうか。
第一印象が貴重なメッセージである3つの理由
いろいろな人の印象や雰囲気を観察して香りをつくっていると、第一印象の希少性がわかってきました。
第一印象にはこんなに貴重なメッセージが含まれていました。
1.第一印象はピュアでフレッシュな情報
私は初対面の方の香りをつくることが多くあります。ふつう、初対面だと相手の情報が何もないので、「つくるのが難しいのではないか」と感じます。しかし、実際には、ピュアな情報を受け取っているのです。
そのピュアな情報とは「第一印象」です。
出会ったときに、最初に感じた印象、それも、頭でいろいろと考えてしまう前の採れたてフレッシュな印象です。
脳の中で印象について言葉が発生する前の感覚なので、言葉にできないのですが、一言でいうとその方が発する「雰囲気」です。
なぜ第一印象がピュアなのかというと、まったく先入観のない直接的な情報だからです。言葉にすらなっていない、なんというかエネルギーみたいなものです。
この「最初の雰囲気」がフレッシュだからこそ、この感覚を言語ではなく香りに変換しやすいのです。だからよく「第一印象の香り」として提供することが多いです。要するに、その人の印象に対する一番搾りですね。
2.第一印象は更新されていく
第一印象で得た印象が、ある意味、その後の先入観になっていくのですが、ずっと最初の印象がその後も続いていくかというと、そうでもありません。
第一印象は、長く雰囲気を決定づける大きな要素ではありますが、言語などの音声情報や身振り手振りといった視覚情報が蓄積されていくことによって、第一印象はだんだんと後ろの背景のように奥に引っ込んでいきます。
会うたびに印象は少しずつ更新されていく感じです。
まるでアプリやパソコンのソフトのように、第一印象ver1.0が第一印象Ver.1.1に更新されていくような感覚です。
第一印象がver2.0にバージョンアップした時には、あなたは初対面で出会った時の印象とは別のイメージで接していることでしょう。
こうした更新がver3.0になり4.0になり、、、とバージョンアップしてくると、もはや、初対面であった時とは、別人と付き合っているようなものです。同じ人物なのに・・・。
ただ、印象はさまざまな情報を付加していきながらバージョンをあげているだけです。初期の初々しい印象は、レイヤー(階層)のかなり下の方にはいってしまっていますが…。
初対面の時は全面的で絶対的な印象だったのに、時間を追うごとに初期の印象は「片鱗(へんりん)」となっていくのですね。
3.人は見える角度によっても第一印象が変わる
同じ第一印象でも、初対面の時に、どの方向から接していたかでも印象が変わることがあります。正面から見ていたときと、斜めから見ていた時とでは、まったく同じ姿を見ているわけではないからです。
私も第一印象で香りをつくって、後日、直接お届けに行った時に「あれっ」と思ったことがあります。
初めてお会いした時には、席が隣どうしだったので、横向きで姿を見ていました。
その時は、顔の輪郭がシャープな感じで、クレオパトラが横を向いた時ように、どことなくエキゾチックな印象をいだきました。
その印象から香りをつくったときには、オリエンタルな要素も入れた大人の女性の香りになったのです。
しかし、お渡しに待ち合わせの喫茶店に到着したときに、今度は相対して座ったので、ずっと正面から見ることになりました。
すると、初めてお会いした時に感じたエキゾチックな印象は影を潜めて、思っていたよりもかなり幼く見えました。実年齢よりも10歳くらい若いんじゃないか!?というくらいの印象の変化だったので、びっくりした記憶があります。
「今の印象だったら、こんなにエキゾチックな香りはつくらなかったのに・・・」と感じたのですが、もう香りをデザインしてしまったので、大人の香りのままお渡ししました。
しかし、2度目にお会いした時に感じた「幼い印象」というのは、初めて正面から見た時の「第一印象」だったのかもしれません。
それは、初対面の時とは違った角度で見た時に「第一印象」だったのです。
実際、彼女自身も、周囲の友達からは「若い!」とか「幼い!」ということは言われているようで、私の「エキゾチックな大人の印象」というのは想定内ではあるようです。
それにしても、見る角度によって、こんなに違うものなのか、と感じた一幕でした。
人間は多面的な生き物であるということ
第一印象と第二印象は違いますし、その人に対する情報量によっても印象が変わります。
それに、人間は「立体」なので、角度によって印象が変わるのは、ある意味当然のことかもしれません。
ただ、自分は自身のことを鏡や映像でしか自分のことを、360度あらゆる方向から見渡すことができません。
目から離れた手足は直視することはできますが、自分の頭や首、背中などを直接見ることは難しいでしょう。
結局、自分の姿をよく見ているのは自身ではなく他人なのです。
そして、自身の印象や雰囲気のメッセージを受け取るのは、周囲にいる他人です。
よく、「私のいいところなんか、ない・・・」と落ち込んでいる人がいますが、それは、自分自身では、見えない箇所が多すぎるからです。身体的な面でも、印象や雰囲気の側面でも、残念ながら、自らは見えるところがあまりないのです。
見えないから「自分には素敵なところなんてない・・・」と感じるのは、もしかしたら、仕方がないことなのかもしれません。
でも、あなたが他の人に対して素敵なところをたくさん知っているように、あなた自身にも素敵なところはたくさんあるのです。私も、印象から素敵なところや、個性的なところをピックアップしてデザインにしているので、よくわかります。
そういう意味では、人間が多面的な生き物であることは、かなり希望です。
それは多面的な中に必ずいい面があるということだからです。しかも、それは隠されているのではなく、外側を向いています。
他人に対して、その側面が見えるから、周囲の人はあなたの素敵な面を感じとることができるのです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
人の印象をデザインしていて気がついたことは次の3点でした。
- 人の第一印象はピュアでフレッシュな情報
- 第一印象は更新されてバージョンアップされていく
- 人間は角度によっても印象が変わる
一人の人間でも、いろいろな側面を持っており、発信する雰囲気も時間軸や方向によって全く異なってくることを書きました。
また、印象を受け取る他人も、その人が持っているどのセンサーでキャッチするのかで変わってきます。
ただ、人の第一印象というのは、初対面のたった数秒の間しか体験できない貴重な機会です。私が第一印象を受け取ることに味わいを感じていることはそのことであり、初対面の一瞬を逃してしまうと、もう、その人の第一印象を体験することができなくなってしまうのですね。
初対面というのは、不意にやってきますし、第一印象も最初が強烈ですが、その時にしか出会えない一期一会の感覚です。
それは、自分自身にも言えることですね。初めての誰かに会う時には、一度きりしか発することができない第一印象というメッセージを送っていることを忘れないようにしたいものです。