香りを表す日本語が極めて少ないなか「レモンの香り」を伝わるように表現するには
レモンの香りは、シトラス系と言って軽く爽やかな印象が特徴です。
今回は、このレモンの香りにいろいろ聞いてみて、その香りの正体を明るみにしていきたいと思います。
香りというのは、表現する言語が限られていて、香りそのものを嗅ぐことなく香りを表現するのは難しいものです。
語彙が豊かな日本語でさえ、香りを表現する形容詞は、「かぐわしい」と「くさい」くらいしかないのです。
つまり、いい香りか、嫌な匂いの2択になってしまう。そのあいだのクラデーションを表すことができないのです。だから、香りを表すのに味覚や触覚など、他の感覚を表す言葉を借りて無理やり、その香りを表現しようとしているのです。
例えば、香道では香りを甘,酸,辛,苦,鹹 (かん) の五味であらわす。甘(あまい)、酸(すっぱい)・辛(からい)苦(にがい)・鹹(塩辛い)の五つの味覚で香りを表現しようとしているのです。
甘い香りや酸っぱい香りというのは、わかりやすいと思いますが、辛い香りや塩辛い香りというのは、なかなかイメージしづらいものです。
- レモンの香りをどのように表現するか
- レモンの香りそのものにいろいろ聞いてみました
- レモンの香りって、つまりどんな香りなの?
- では、正確に香りを表現するにはどうしたらいいの? レモンの香りを説明するのに「レモンみたいな香り」という言葉を使わずに、うまく表現することはできるだろうか
- 正確に香りを表す方向とは?
- それでは、「レモンの香り」に到達するように定義をするには、どうすればいい?
- でも、それでは、レモンの香りを嗅いだことのないかもしれないアマゾン奥地の人に、伝えられない…。
- それじゃぁ、あなた自身は、レモンの香りをどのように伝えるの??
- なんか、ぜんぜんわからない…。
- そんなこと言ったら、やっぱり香りをみんなにわかるように伝えることは不可能、ということになるよね。
- パーソナルな感覚?
- 自分だけに通じるだけでいいの?
- ははぁ、確かにそうですね。
- レモンの香り まとめ
レモンの香りをどのように表現するか
それでは、レモンの香りはどうでしょうか。
酸っぱいけれど、ほんのり甘い。そんなところでしょうか。
でも、酸っぱいけれど、ほんのり甘い、というだけで「レモンの香り」とわかってもらえるでしょうか。
酸っぱくて甘い香りというのは他にもいろいろありそうです。
梅やりんごの香りも酸っぱくて甘いのでは?
と思ってしまいますし、オレンジやグレープフルーツはどうなの?…と、なかなか難しそうです。
「酸っぱくて甘い香りとはなんでしょう?」
「それはレモンの香りです」
とは一発で答えられないのではないでしょうか。
・・・ということで、レモンの香りをいろいろ紐解いていきたいと思います。
レモンの香りそのものにいろいろ聞いてみました
レモンの香りって、つまりどんな香りなの?
爽やかで清涼感があって軽くてみずみずしい香りと表現されることが多いです。
でも、レモンの香りを嗅いだことがない人が、その言葉を聞いてからレモンの匂いを知った時に、「まさにその言葉のとおりだった」となるかどうかは微妙なところです。
もしかしたら、ミントみたいな匂いを想像するかもしれません。
では、正確に香りを表現するにはどうしたらいいの? レモンの香りを説明するのに「レモンみたいな香り」という言葉を使わずに、うまく表現することはできるだろうか
いや、言葉で説明するのはなかなか難しいですよ。香りは目に見えないので、それを言葉で表すと、解像度が低くなってしまいます。
多くの言葉を使って表現しても、言葉の行間に頼ることが多くなって、正しく伝えることができなくなってしまいます。
それに、正確に香りを表す方向に向かっているかどうかも定かではありません。
正確に香りを表す方向とは?
「レモンの香り」というものを正確に表すためのゴールに向かう道のことです。こういう表現をしたら、「レモンの香り」に到達する、というような方向です。
その方向が少しでもずれてしまうと「レモンの香り」には到達しないのではないかと思っています。
それでは、「レモンの香り」に到達するように定義をするには、どうすればいい?
それは、非常に難しい質問です。
香りと言葉は表現方法が違うので、正確に置き換えることはできないと思っています。
例えば、「色」だってそうでしょう。「赤」について、広辞苑ではこのように定義しています。
「七色の一つ。血のような色。」
つまり、何かにたとえないと定義できないということです。
「七色の一つ=赤」とはならないでしょう。
血のような色、ということで、初めて「赤」というものがどのようなものかがわかるわけです。
でも、これも血の色を知っているから、わかるのです。
もう少し難易度を上げると、赤でも、明るい赤や暗い赤など、いろいろな赤もあります。
そうしたものを言葉で表現するのは難しいでしょう。
コンピュータの世界では、赤色を
ff0000
と表現されますが、これも、赤という色を数字や記号、アルファベットで表しているのです。
香りも、このようにコードで表すことができれば、定量的に定義できるかもしれませんが、難しいでしょうね。
でも、それでは、レモンの香りを嗅いだことのないかもしれないアマゾン奥地の人に、伝えられない…。
そうですね。。。レモンの香りは多くの人が知っているだけに、柑橘系の香りの基準的なものになっています。
赤色の「血液」のように、レモンのような香り、とレモンは香りを表現するための基準的な言葉です。
でも、レモンの香りを知らない人には、正確に伝えるのは大変ですね。
きっと、爽やかだの、軽いだの、ちょっと甘いだの、酸っぱいだの、そうした言葉を複数並べてイメージしてもらうしかないような気がします。
それじゃぁ、あなた自身は、レモンの香りをどのように伝えるの??
初夏の朝の光を浴びた空気、そして、そこに宿る精霊を感じて、思わず空を見上げてしまうような気持ちの香り。
なんか、ぜんぜんわからない…。
これは、自分自身の中にあるパーソナルな感覚です。
もちろん、こうして人に伝えることもできますが、共通の感覚を保有していないために、自分以外に人にとっては解像度が一気に下がってしまうでしょう。
でも、自分自身の中では、最も解像度が高い表現、ということになります。
そんなこと言ったら、やっぱり香りをみんなにわかるように伝えることは不可能、ということになるよね。
万人に正確に伝えることができるかというと、確かにそれは無理なことかもしれません。
香りを表現するには、いわゆる万人向けには、
爽やかで清涼感があって軽くてみずみずしい香りと表現してしまいます。これくらい大雑把でないと、その香りが表現する輪の中に入れないからです。
輪の外にいると、まったくイメージできない。
やはり、解像度が高い表現というのは、パーソナルな感覚に委ねられてしまうのです。
パーソナルな感覚?
そう。パーソナルな感覚。
つまり、自分自身で自分にしっくりくる香りの言葉を探さなくてはなりません。
自分だけに通じる香り表現とでもいいましょうか。
自分だけに通じるだけでいいの?
香りについて、自分が感じているように、他の人も、におっているはず、と思ってしますが、そうではありません。
だって、レモンの香りだって、特に日本人には人気の香りですが、「レモンの香りは嫌いだ」という人もいるでしょう。
レモンの香りが好きな私としては、「レモンの香りは嫌いだ」という人が感じているレモンの香りは、きっと私が感じているような香りではないと思うのです。
私と同じように感じていたら、レモンの香りは好きになるはずですし、私が感じている香りと違うように感じているから、「レモンの香りは嫌いだ」と言っているわけです。
ははぁ、確かにそうですね。
だから、香り表現も、究極的にはパーソナルな表現にならざるを得ないのです。
同じ香りを嗅いでも、自分が感じているようには、他人は感じていないかもしれない。
そうであるならば、「レモンは爽やかな香り」と表現したとしても、嫌いな人にとっては爽やかな香りではないから通じないのです。
レモンの香り まとめ
レモンの香りは、柑橘系の香りの代表で、一般的には「爽やかで清涼感があって軽くてみずみずしい香り」と表現されることが多いです。
でも、香りを言葉で正確に伝えるのは非常に難しいことです。
香りそのものを表す言語がほとんどないこととや、人によって感じ方が大きく異なることから、香りの共通言語が見つからないということがあります。
ただ、自分自身に対してであれば、かなり正確に伝えることは可能です。
それはパーソナルな香り体験をパーソナルな言葉で記憶することができるからです。
香りそのものを表現するには、嗅覚で感じてもらうしかなく、そうしたところに、時間的空間的な制限が生じるのです。
まさに、「いまここ」で感じるのが香りと言えます。