天然の桜の香りを水蒸気蒸留法で取り出してみた
桜の香りというと、桜餅や桜湯の香りを思い浮かべると思います。
いわゆる市販の「桜のかおり」というのは、淡いピンク色の印象をイメージしたもので、実際の桜の香りではありません。
私が調香のスクールに通っていた時に、年配の香料会社社員の方も一緒に学んでいたのですが、その方がソメイヨシノの香りの抽出にチャレンジしたことがありました。
花の精油は採取できなかったようですが、成分は少し採れたようで、香りをチェックさせてもらったら、確かにほのかな桜っぽい香りがしました。それでも、本当にうすーい香りではっきりと輪郭が分かるまでの匂いではなかったと思います。
やっぱり天然の桜の花の香りを採取するのはプロでも難しいようでした。
桜の香りの採取
私も採れないことはわかっていたのですが、今回、東海桜という品種の桜を買ってきて、香りの採り出しに挑戦してみました。
咲きはじめの桜をバラバラにするのは、ちょっと抵抗がありましたが、それだけに、なんとか香りを取り出してみようとしました。
今回は、香りを採取する基本である水蒸気蒸留法で採取してみます。
- 咲きはじめの桜を買ってくる
- 花の部分を丁寧に枝から切り落としていく
- 余計な屑を取り除く
- フラスコに精製水を入れる
- コンロで1時間ほど蒸し焼きにする
- 水蒸気に付着した芳香成分を冷却器とセパレータで分離
…こんな感じでやってみました。
・・・結果としては、フローラルウォーターが少し採れただけで、香料成分は採れませんでした。
やはり、なんとなく桜餅っぽい香りがうすーく感じるだけで、一般的な機器では抽出が難しいかな、と思いました。
無臭ではありませんでしたが、いわゆる桜餅の香り(クマリン)の匂いがほのかにする…といった感じです。
それに、花の香りを水蒸気蒸留法で採取しようとしたので、どうしても、熱で壊れてしまう芳香成分もあります。やはり、そのままの香りを取り出すのは難しいようです。
桜の香りはどこにある?
桜の香りというと花から出ていると思ってしまいますが、実は、香りそのものは、別の場所にあったりします。バラの花の香りを採取するように、花から漂う香りを溶剤に移しとる、というような感じだとあんまりうまくいかないと思うのです。
大規模な機械を使って低圧で採取する方法が最近開発されたようですが、実際に取り出すには採算が合わないようです。
でも、今回の実験で、桜の精油までは採れないにせよ、「こうすればもう少し濃ゆい桜の香りを取り出すことができるのではないか」ということもわかったので、次は蒸留法ではない方法でチャレンジしてみるつもりです。